
お先にどうぞ
車を運転していて、トラックの後ろを走るとよく荷台の後ろに張り紙がしてあって、この車は時速40Kmで走ってます、とか法定速度で走ってます、とか書いてある。やっぱり荷物積んでいるし、仕事だから安全第一なんだな、と思う。でも、たまにその後に「お先にどうぞ」と書いてあるトラックがある。
おいおい、ちょっと待てよ、と言いたくなる。法定速度で走っている車を、追い越していったら速度オーバーになるだろうが。こんな風に日常で一見真面目そうに走っているトラックが、一般ドライバーに犯罪を促していいものだろうか。
大げさにたとえれば、「私たちは適当にタバコ吸いますけど、どうぞマリファナでも吸ってください」と言ってるようなものである。
このトラックの張り紙の気持ちはすごくよくわかる。周りの車からはいつもトロトロ走ってる、と迷惑がられ、時にはクラクションを鳴らされたり、煽られたりしたのだろう。そこまでされるくらいなら先に行ってくれ、と言いたくもなる。でもそうなら、「○○キロで走ってます」だけで十分伝わるはずだ。それを「お先にどうぞ」なんて爽やかに、付け加えてしまうなんて、ちょっとそりゃないんじゃないかな、と思う。どうせ爽やかに言うのなら、
「一緒にゆっくり行きましょうや、お互い先は長いでしょ?」とか、
「あわてないで周りの景色でも見てごらんなよ。紅葉がきれいですぜ」
みたいな感じで言って欲しい。おちょっくっているのか!と馬鹿にされそうだけど、どうせ追い越していくやつは、そこまで読まないよ。
そうじゃなかったら小林一茶の句とか茨木のり子の詩を載せて和ませて欲しい。メジャーどころでは、高杉晋作の辞世の句でもいいんじゃないだろうか。もちろんルノアールの”ルグラン嬢”とかでも大歓迎ですよ。ピカソの”ゲルニカ”じゃちょっと重いかな。デコトラがあるのだから、こんな風に思いっきり的外れな絵が描いてあるトラックがあってもいいと思う。
とまあどんどん話はあほらしさを増していく。どうぞ、お先に行って下さい。
by 太田ルイージ