ひとり陰湿

大人になるということ

小学校に上がった頃、近所に小学校6年生の男の子がいて、よく遊んでもらった。今の年齢で考えれば、小学生なんてガキだけど、1年から見れば、6年生なんて大人と同じである。その大人がある日面白いことを言った。

「俺が石を本気で投げれば、お前の頭なんて簡単に吹っ飛ばすことが出来るよ」

なんでこんな話になったのかは憶えていないが、その人は小石を手に持って、太田に言った。おそらく太田が気に入らないことをしたので、戒めの意味で言ったのだろう。その人の手の中の小石が自分の頭を貫通するところを想像すると、ぞっとした。だが、それ程怖くはなかった。その人が自分にそんなひどいことをするとは思えなかった。そしてその一方で、とてもワクワクした気持ちになったのを憶えている。俺も6年生くらいになれば、人を殺せるくらい石を強く投げられるんだろうな、と思った。

だが、当たり前だけど、大人になった今でも小石を投げて、人の体を貫通させることは出来ない。そんなことが出来れば、拳銃なんて必要ないし、もっと物騒な世の中になってしまう。でも、1年生だった頃、太田は素直にそのことを信じた。それがいつ、あまり趣味がいいとは言えない冗談だと分ったのだろう。

大人になるというのはこんな風に、いろんなことの正体が暴かれていくことなのだ。疑うことなく素直に信じていたことが、少しずつ検証され、理屈付けられ、そして現実にそぐわないものは、淘汰されていく。それがやがて世界全体をすっぽりと覆いかぶせてしまう。そんな風に考えると、大人になるというのはとても味気ないものなんだな、と思う。

(2009年1月01日更新)

by 太田ルイージ

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