
どうせ自分がどんな人間かわからないなら、 自分のことはどうしようもないバカだと思いたい
ゴルゴ13に仕事を依頼しようとするとき、依頼人が握手を求めようとすると、ゴルゴは「俺は自分の手を他人に預けるほど自信家ではない」と言って断る。ゴルゴ13が同ジャンルの他の漫画と一線を画す要因は、このセリフにあると太田は思う。リアルなのだ。世界一の殺し屋というのが本当にいるとするならば、こういう人に違いないと思わせる。
さて、そのゴルゴ13が何故、超一流のスナイパーになりえたかと言うと、作中の分析では、「自分を客観的に見られる」かららしい。つまり、自分がどんな人物か、また今どんな状況に立たされているのかを、感情を抜きにして、的確に判断できるということだ。常に第三者的に自分を見ることが、自分の手を他人に預けない、自分の真後ろに人を立たせない、といった行動につながるということだ。
逆を言えば、並みの人は他人の目で自分を見ることはできないということだ。自分がどんな人間なのか。もちろん人に聞けばある程度はわかる。でも人に聞くにしろ、自分で考えるにしろ、自分がどんな人間なのかを判断するとき、そこに主観が入る。自分について過大評価もするし過小評価もする。勝手に解釈して、調子に乗ったり、無駄に自分を苦しめるたりする。そして多くの場合そういった”行き過ぎた自分”に気付かないのである。(または気付いていても軌道修正が出来ない)
もちろん年齢や経験を重ねれば、自分を客観視する能力は身につく、という意見もあるだろう。でも太田は、今まで様々な人、いろんな立場や年齢の人と接してきて、自分を客観視する、というのは到底不可能なことなんだな、と思わされた。不可能、ということは太田自身もまた、自分のことがわかっていないということになる。
そんなわけで、結論として、どうせ自分はどうしようもないバカなんだ、と思うようにしている。人を傷つけずに、傲慢にならずに、勘違いせずに生きていくには、そうしていくしかないような気がする。まあ、でもそうやっていくのも、ものすごく難しいことなんだけど。
何事にも謙虚にいきたいですね、ほんとに。
by 太田ルイージ