ひとり陰湿

ミートボール

幼い頃、どういうわけか自分の家はとても貧しいと思っていた。もちろん金持ちというわけではない。でも幼いながらも、世の中にはお金を持っている人と、持っていない人がいて、持っていない人は、いろんなことを我慢しなきゃならないんだと思っていた。多分、物心つく前から親に「うちは貧乏だから・・・」みたいなことを、吹き込まれていたのだろう。

だから幼稚園時代、テレビで「石井のお弁当君・ミートボール」のコマーシャルを見たとき、食べてみたいな、と思ったものの、絶対うちの財政じゃ買えないだろうな・・・と思っていた。だいたいテレビで紹介されるものなんて、高級品に決まっている。自分のお弁当の華は、せいぜい玉子焼きくらいである。あとは昨晩の夕飯の残りとかそんなのばっかりだ。

それでも、断られるのを覚悟で母親に「あのテレビでやっている、石井のお弁当君、ミートボールが食べてみたいんだけど・・・」と頼んでみた。すると母親は「いいよ」と、あっさり承諾してくれた。そのときの予想外の返事に対する驚きと感動は、今でも忘れられない。もちろん今考えれば、とても滑稽な出来事だ。庶民が買えないものを、わざわざテレビで宣伝するわけない。でも、そのときは自分ほど幸せな子どもはいないんじゃないか、と思うくらいうれしかった。

そんなわけで、今でもお弁当にミートボールが入っていると、そのときのことを思い出す。幸せって結局・・・みたいなオチにいくと、ありふれてしまうのでこれ以上は書かないけど。

(2009年1月01日更新)

by 太田ルイージ

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