
オートリバース
高校から大学にかけて、よく机に向かっていろんなものを書いたりした。勉強は好きじゃないけど、机に向かうのはあまり苦にならなかった。時間はだいたい深夜で、あまり大きくない音で音楽をかけたりしながら作業をする。贅沢な時間の使い方だ。あの頃は本当に時間が有り余っていた。
書き物をしながら音楽を聴くのはとても気持ちがいい。どのCDにしようか選ぶのも楽しいし、同じCDを聞いても違った印象を受けたりする。でもだんだん作業がのめり込むと、結局音楽なんて耳に入らなくなる。気がつけば全曲流し終わってた、んてことがよくある。
でもそれが、すごくよかった。ふと気がついたときに、部屋が静まりかえっていて、鉛筆をこすりつける音だけが響いている。CDが終ってからどれだけたったのかもわからず、部屋の空気は張りつめている。自分が今とても集中していたことが、手に取るようにわかる。音楽が終ったことに気づいてすぐに別のCDをかけたりしたが、たいていはそのまま作業を続け、その空気を楽しんだ。
それから月日が流れて、そういうことをする時間も、書き物をする机もなくなった。音楽もCDはあるけどプレーヤーがないので車を運転するするときに聞くくらいである。でも車を運転していて、頭にくるのが一方的にオートリバースで再生されることである。どんなに気に入っている音楽だって、立て続けに3回も聞かされたらうんざりする。とにかくなんか音が鳴ってりゃいいんでしょ?と馬鹿にされているような気になる。
やれやれ、これじゃ本当にあの頃が一番よかったみたいだな。
(2009年1月01日更新)
by 太田ルイージ