
暗記は苦手なんだけど
この前電車の中でおもしろい光景を見たので報告します。
ひとりの女性が、つり革に掴まりながら本を読んでいた。かなり熱心に。どんな本なのか、さりげなく見てみるとPC関係の資格試験対策の本だった。文面の重要と思える箇所に、ピンクの蛍光ペンがなぞられている。試験勉強でよくやるやつだ。でも、おかしなことがひとつあった。そのピンクの蛍光ペンは、ページのほとんどを塗りつぶしていた。言い換えると、そのページはすべてが覚えなくてはならない重要な内容だということだ。太田は昔から暗記は苦手なので、こんなことを思うのは恐縮だけど、それって意味のないことである。ページのすべてが重要なら、わざわざマーキングする必要はない。
よくよく考えてみると、女性が読んでいるのは学校の教科書ではない。試験合格のために作られた一つのツールなのだ。だから最初から重要な情報のみで構成されていると考えていい。わざわざ蛍光ペンでマークして他と区別する必要はないのだ。マークする時間を使って、一つでも多くの情報を理解した方が賢明である。
思い返してみると、太田は学生時代に教科書のマーキングなんてほとんどしなかった(もちろん教科書全部を塗りつぶすのは論外だ)。なぜかと言うと、そういうことをすると、それだけで勉強をしたような気になってしまうから。たとえば、効果的なノートの取り方とか。ノートに何本か線を引いただけで、自己満足してしまい、内容はほとんど書き込まない。ひどいときは、参考書を買っただけでその日の勉強が終了する。
とてもまじめな人が、本当に一睡もしない勢いで勉強したのに、たいした結果を出せないのは結局勉強の準備で満足してしまったせいだと思う。昔から性格の悪い太田は、そういう人をからかい、小馬鹿にして怒らせたりした。
電車内で勉強していた女性が、もし太田の親しい人だったとしても、今はからかったりしないけれど。
by 太田ルイージ