
十年間
およそ十年前、宮崎駿監督の映画「もののけ姫」を見た。当時はまだ高校生だった。映画館に3回くらい足を運んだ。映画のテーマが、そのまま自分の人生のテーマになった。
「もののけ姫」が公開されるとき、宮崎駿はこの映画をもって監督業を引退すると宣言し、マスコミはそれを騒ぎ立てた。結局そのあとも映画は作られ続けたけど、最後の作品になりえる、というエネルギーというか緊張感をもろに受けた。解説書を買って読みあさり、映画の根底にある、「救いのなさ」に正面から向かい合った。そしてその熱が冷めた頃、また次の映画が発表されたが、もう積極的に映画館に足を運んでまで見たいとは思わなかった。もちろんつまらない映画だとは思わないけど。
けれど先日、たまたま「崖の上のポニョ」を映画館で観た。興味はあまりなかったけど、見始めるとやっぱり宮崎アニメの世界に引き込まれる。(なんだかんだ言ってもファンなのだ)しばらくするとなぜか涙が出てきた。それも号泣と言っていいくらいの量だ。別に泣けるシーンという訳でもない。たぶんこんなシーンで泣いているのは太田だけだ。でも、とてつもなく胸が詰まってしまった。映画を観てこんなに泣くのなんて初めてかもしれない、てくらい泣いた。
ただ伝えたいことのみを残して、余計なものは一切そぎ落とされたような印象を受けた。最後のスタッフロールが、名前のみで一瞬で終ってしまったので、思わずにやけてしまった。誰が何やったかなんて、観てる人には関係ないもんね。
10年間でそういう境地まできたんだな、と思った。そして自然と自分の10年間を振り返り、それが思っていた以上にとても長い道のりなんだったと感じた。いろんなことが起こり、自分の中の多くの部分が変わってしまった。それが良いことなのか、悪いことなのか、今はまったくわからない。でも、映画を観ているとき、あるいは救いのようなものを感じたのかもしれない。
by 太田ルイージ
310妻
2010/02/06 12:39胸がキュッってなる。。