
秋
季節の中で夏が一番好きだ。だから秋に入り徐々に涼しくなると、なんだか寂しくなってくる。生き物の気配が少しずつ消えていき、街ゆく人もたよりなさげに見える。そういう風に思うとますます気持ちが滅入る。これが完全に冬になれば諦めもつくというか、もうすぐ春だ、といくらか希望も持てる。それまで太田は中途半端で暗い気持ちで日々を過ごす。
でもここ何年かはそういう状況も変わってきて、暑さが和らいで過ごしやすくなるのが素直に喜べるようになった。先日もふと、こんなにベストな気候の日は一年に何日あるのかなと考え、一人で勝手に幸せを噛みしめてしまった。ジジ臭くなったと言われればそれまでだけど、心地よいと思うことが増えるのは悪いことではない。それにこのここ数年の脳みそが沸騰する位の暑さを、はしゃいで喜ぶくらいの無邪気さはもうない。いつかはみんなじじいばあになるんだし(開き直り)。
さて、秋になると必ず口ずさんでしまう曲がある。ブランキージェットシティの「リス」という曲だ。しっとりした曲だけどそれが行き過ぎないし、男の女のなんちゃら〜、というのがないのでとても気に入っている。特に後半の詞は文学的に文句のつけようがない!秋ってこういう季節なんだな、と思わず空を見上げ、心の中に小さな穴が開いていることに気づく。そしてそれが決して誰とも共有できないものなんだと悟る。
(2009年1月01日更新)
by 太田ルイージ