
漢字が書けない
昔から漢字が書けない。小学生の頃は毎日のように「漢字3行」とか宿題でやらされたけど、つらかった記憶しかない。書くのがつらいのはもちろん、同じことを繰り返すのもきつかった。少しでも楽にできるようにとよく、ひとつの漢字をパーツごとに書いたりした。まるでベルトコンベヤーで流されながら、少しずつ組上がっていく機械みたいに。こんな調子だったので、テストも散々な点数だった。いつも居残り勉強をさせられていた。でも残っていた記憶はあるけど、そこで勉強していた記憶はない。同じように残されたやつと、気の合う同士で遊んでいた。
中学に入ると、勉強の中の漢字が占める割合が少なくなったので、極端に低い点数をとることはなくなった。そうすると、単純な太田は「漢字は克服したんだな」とすぐに勘違いしてしまう。まあ得意までいかなくても、人並みにはできるんだな、と思うようになっていた。
でも高校に入って、自分で文章を書くようになると、ものすごく誤字脱字が多いことに気づいた。「旅」を「族」と書いたり「毛沢東」を「毛択東」と書いたり。さらには、「少しずつ」を「少しづつ」と書いて注意されたりと、平仮名も怪しいことがわかった。試験でも平仮名を書き間違えて、減点されたこともある。ちっとも昔と変わっていなかった。
でも今は、文章を書くのもパソコンか携帯ばかりなので、難しい漢字もするりと書いてくれるようになった。自分の書く字に自信がなくても、わざわざ辞書をひかなくてもよくなった。あえて良くないところをあげれば、気を抜くと漢字が多すぎてしまったり、自分に馴染みのない漢字を使ってしまうことだろうか。でもこんなの気にしなければ、なんでもない。だから自分が漢字が苦手なことも忘れかけている。それでいいのか?という気もするけどまあいいか、という気もする。どんどん馬鹿になろう。
by 太田ルイージ