ひとり陰湿

ポケットの中の飴

先日お昼を食べた後、道を歩いていると、ポケットの中に何かが入っていることに気付いた。なんだろうかと手を突っ込もうとしたが、すぐにのど飴だということを思い出した。前の日に家で見つけたのをなんとなくポケットに入れ、翌日も同じズボンをはいてきたのだ。だがおかしい。確かその後飴は、ポケットから出してタンスの上に置いた。次の日も同じズボンをはくとは限らないし、そのまま洗濯でもしたら悲惨なことになるからだ。でも現実に飴はポケットに入っている。多分取り出そうと思っているうちに、いつの間にか出した気分になってすっかり忘れていたのだろう。まあとにかく現実にポケットの中に飴があるのだから、そういうことなのだ。会社に戻ったら舐めよう、と思った。ちょっとほくほくした気持ちになった。

だが、会社に戻って仕事にとりかかると、しばらく飴の存在を忘れてしまった。夕方くらいに「おっそういえば」と思い出し、ポケットに手をつっこんだが、ポケットには何も入っていない。おかしい。確かに昼間、のど飴が入っていた。どこかに落としてしまったことも考えられるが、ポケットから飴みたいな小さいものがこぼれるなんて、滅多にない。でもそんなこと言ったって、現実に飴はなくなったので、どこかで落としてしまったのだろう。

少し残念に思いながらも、そんなこともすぐに忘れ、家に帰った。すると飴は、タンスの上にあった。少しびっくりした。結局飴は、最初からポケットに入っていなかったのだ。もちろんただの飴だから、誰か別の人が同じ飴を置いたことも考えられる。でも、自分の感じとしては、やっぱり昼間のは記憶違いだったと考えるのが妥当だ。記憶違いというか、変な記憶をすり込まれてしまったように感じる。

という不思議な体験をした。というか自分が当てにならないという話です。

(2009年6月23日更新)

by 太田ルイージ

コメントを書く

名前:

コメント(500文字まで):