歌詞のギャップ

イエローモンキーのJAMのなかでこんな歌詞がある。

「素敵なものが欲しいけどあんまり売ってないから好きな歌を歌う」

なかなか素敵な歌詞である。だがこれがライヴバージョンだとこう変わる。

「素敵なものが欲しいけどなんにも売ってないから好きな歌を歌う」

'あんまり'が'なんにも'になってしまうのだ。CDの中ではわずかに売っていた素敵なものは、ライヴになると一切なくなってしまう。これが何とも言えず心地いい。

歌詞として考えるなら、'あんまり'のほうがリアルだ。'なんにも'と言うと、野暮でガキ臭いな感じがする。でも、普段はもともとは'あんまり'で認知されているものが、いきなり'なんにも'、と変わるというシチュエーションだとちょっと違う。なんというか、「いつもは体裁を考えてこの歌詞だけど、今日は本音で語ります」言われているような気分になり、少し親密になれたように思ってしまう。

ライヴというのは文字通り、「生」だ。生きているということを表現する。このイエローモンキーの歌詞のギャップは聴いている者に、今いる場所が、生の発散場所だということを効果的に教えてくれる。だからこそ盛り上がる。

あるミュージシャンのファンになると、たくさんの曲を聴くようになる。そうすると、いわゆる売れた曲、メジャーな曲の評価が自分の中で下がってくる。でもイエローモンキーのJAMに関しては、この歌詞のギャップのおかげで、自分の中の好きな曲としてキープできるのだ。

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