ひとり陰湿

過去は過去のままで

子どもの頃ドリフのコントが大好きだった。その頃は毎週土曜日と火曜日に番組がやっていて、両方とも夜8時からの放送だった。その頃太田の家では、就寝時間は8時と決められていたのだが、ドリフの放送日だけは目をつぶってもらい、毎回欠かさず観た。もう何を見てもおかしくてしょうがなかった。もともと気管支が弱かったせいもあったけれど、笑いすぎてたびたび呼吸困難になった。コントの内容とかはほとんど覚えていないけど、自分が文字通り死ぬほど笑ったことは今でもよく覚えている。

そんな風に幼少期は一途過ぎるほどドリフ一筋だったので、裏番組のひょうきん族なんかは存在すら知らず、「全員集合」が終わっても、その後の「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」を観続けた。結局クラスの話題についていけなくなるまで(気がつくと「とんねるずのみなさんのおかげです」「ウッチャンナンチャンのやるならやらねば」がクラスのスタンダードになっていた)コント、というかお笑いと言えばドリフしか知らなかったのである。

そんなわけで、何年か前に、ドリフのDVDが発売されたときには当然うれしく思い、ぜひ買って手元に置いて観まくって、棺桶まで持ち込まなきゃいけないな、とまで思った。

けれどそう思いつつも、結局買わなかった。仕事が落ち着いたら買おうとか、まとまったお金が入るまで待とう、とだらだらしているうちに、タイミングを逃してしまったのだ。

そうしたら、去年TBSの何周年の記念か何かで、当時の全員集合が放送された。これこそ待っていた甲斐があったと喜び、録画もバッチリして観た。

ところが実際観てみると、面白くないのである。もちろんつまらないわけではないが、手を打って大笑いするほどでもないのである。いくつかのコントは当時観た記憶があって、懐かしい気持ちになった。しかし正直こんなもんだっけ?と感じてしまった。

でも考えてみれば仕方のないことだ。番組の放送終了からもう何十年も経っていて、自分がもうあの頃と同じなわけがないのである。笑いに限っても、いろんな事を経験して、自分でもはっきりと意識できるくらい、自分が笑いに求めること、自分が心の底からおもしろいと思えることが変わってしまったのである。それでもドリフのコントを、この目で実際に見るまでは、ドリフの笑いは自分にとっては不変だし、いつ見ても大爆笑できると信じていた。大げさに言えば、見るべきではなかったのである。

過去は過去のままがいいってよく言うけど、その考えが少しだけわかった。笑いに限らず、どんなに懐かしくても、掘り起こしちゃいけないものがあるんだね。

(2010年2月16日更新)

by 太田ルイージ

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