
睡眠について
昔、起きなければいけない時間の1時間くらい前に目が覚めると、とても幸せな気持ちになれた。
たとえば出かけるのに、6時に目覚ましをセットしたとして、偶然5時に目が覚めると「あと1時間眠れる」 と思ってうれしくてたまらなくなる。 なぜそういう感覚になるのかはわからない。仕事かと思ってあわてて起きたら休みだった、というのと似ているが、 結局出かけなきゃいけないので、むしろ憂鬱な気分になるのではないのだろうか。現に今は予定より早く起きてもうれしくともなんともない。でも中学生くらいのころは、「明日も1時間早く目が覚めないかな」と祈りながら床についた。 なんだか小学校の校長が、子どもに早寝早起きをさせるためにするような話になってしまった。早起きをして深呼吸をしてみましょう、とてもさわやかな気分になれますよ、 みたいな。
しかし大学に入ると完全に夜型人間になり、”早起きの幸福”は全くなくなってしまった。まあ誰でもそうだろうけど、 若いうちは夜はついだらだら起きてしまう。それで昼過ぎに起きるのだが、とにかくだるい。脳みそが水を大量に含んだスポンジみたいになって、 はれぼったくて、夕方までまともにものを考えることもできない。そのころは朝の5時6時に起きるなんて、 奇跡でも起きないと無理だと思っていた。
だが大学卒業間近になると、長時間寝るのがつらくなってきた。理由はわからないが、あまり長い時間寝ると、 決まって金縛りにあう夢を見るのだ。これが本当にしんどい。自分では夢だということはわかっているけど、体は動かないし、 どうすれば目が覚めるのかもがわからない。たぶん頭は起きているのに体は寝たままだからそうなってしまうんだと思う。 決まって息を切らせながら、汗びっしょりで目が覚める。
だからというわけではないけど、今度は毎朝5時半に起きるようになった。これは早朝6時からのコンビニのバイトを始めたからである。 いきなり極端な変化だったが、健康な感じがしてよかった。たった3時間のバイトだったので、終わった後散歩したりした。 でも健康的なのはいいけど午前中から住宅街の中を歩くのは、明らかに不自然だった。 もし近くで殺人事件とかあったら一番に疑われるだろうな、と思いながら歩いていた。
そのうちに、夜も夜で好きなことがしたい、と思い睡眠時間を限界まで減らしてみた。とりあえず4時間半も寝ればいいな、 と思い、夜は1時に寝て翌朝5時半に起きるという生活が始まった。これは今思うとつらかった。朝のバイトは3時間だったが、 午後も4時間働き、毎日じゃないが、夜も3時間くらい働いた。おかげで居眠り運転を何度かしたし、飲みに行っても眠くて仕方がなかった。 今でもお酒を飲むと眠くなってしまう。でも一方で集中して寝る術を見につけたような気がする。 本当に眠いときは5分でも眠ればすっきりするし、徹夜するよりたとえ1時間でも寝たほうがずっと楽だということがわかった。
会社勤めをするようになってからはその頃よりは睡眠をとるようにはなった。けれどどうしても、 寝てる時間がもったいないと感じてしまう人間なので、なんとか眠る時間を削れないかなと思って、この夏も2週間くらい3、4時間まで睡眠時間を縮めてみた。
寝なくてもぜんぜん平気、という人がうらやましいです。
by 太田ルイージ