Manga Word 第1回

楽に行こう!

作品名 「ONE PEACE」

著者 尾田栄一郎


太田は「がんばれ」という言葉が好きではない。そして太田に限らず、世間全体が、この言葉をそれ程使いたがらないのかも知れない、と感じたのが、このジャンプで連載中のワンピースの中の「楽にいこう!」というセリフである。

シチュエーションとしては、主人公たちが無人島に取り残されたおっさんに出会い、そして別れ際に「楽に行こう!」と言う。読んで勝手に感じるのは、かなり微妙な部分で作者は「がんばれよ」というセリフを避け、「楽にいこう!」を採用したのではないかということだ。おっさんは無人島で一人ぼっちで何年も暮らした上に、残された希望も経たれてしまっている。そういう人がいたら、「がんばれよ」と声をかけるのが、一番ふさわしいだろう。なんで”がんばれ”はダメなのか。

太田が子どもの頃は、まだ”がんばれ”は、好んで使われる言葉だった。歌の歌詞にもよく出てきたし、テレビアニメも根性丸出しで、「がんばれ!」と励ましあっていた。でもいつの頃か、だんだんと”がんばれ”は暑苦しいし、相手にプレッシャーを与える言葉になってしまった。何より嫌だったのが、この言葉がたまに決まり文句のように、使われてしまうことである。ストレートに言うと、大して相手のことも考えずに、とりあえず励ませばいいか、みたいな安易な考えである。

でもそんな風に”がんばれ”を否定的に考えるのは、てっきり太田だけなのかと思っていたが、結局は世の中がそんな風潮であり、太田も漫画のセリフも、それに影響されていたのだ。きっとバブル経済の崩壊とか、ゆとり教育とか、行き過ぎた個人主義だとか、”がんばれ”が重くなってしまった原因はたくさんあるのだろう。けどまあ、正直それはなんでもいいや。

でも、「がんばれ」も「楽に行こう」も、ほとんど同じ言葉だと思うけどね。


(1/4/2008)
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