Manga Word 第2回

公平である必要はないが、
公平感はあたえなければならない

作品名 「賭博破壊録 カイジ」

著者 福本伸行


この漫画を読んだことのある人は知っているだろうが、「カイジ」にはやたらと格言めいたセリフが多い。カイジ格言集が、別冊で発売されちゃうくらい多い。その数ある格言の中から、今回取り上げたいのがこの「公平である必要はないが、公平感は与えなければならない」というセリフだ。

使われた場面は主人公の敵役である、ある金融会社の会長が、部下をしかりつけるときである。主人公とギャンブルで大金を賭け、勝負をしていた部下が当然のようにイカサマをしていた。しかしそれがあまりに露骨過ぎるので、会長が怒ったのである。つまり勝つために、イカサマはいいけれど、露骨にやり過ぎるのがマズイ、ということである。

こういう風に紹介すると、ちっともいい言葉じゃない、と思うかもしれないけど、太田はこの言葉がとても気に入っている。別にばれないようにイカサマをやれ、という意味ではない。ただ、実社会にすごく即した言葉だと思う。例えばモノを買うときのことを考えてみると、何かを買うときにはお金を払う。当前、売る側、供給する側は、それによって儲かる訳である。でも売ったほうはどれくらい儲かったかなんて、絶対言わない。つまり情報量について言えば、売り手と買い手は不公平なのである。

何言ってんだ、そんなの当たり前だ、と思う人がいるかもしれない。でも例えば、1万円払って買ったものが、実は原価100円だと知ったら頭にきませんか?それは詐欺だ、と思うかもしれない。けれど、取引として成立したら、もうどうすることも出来ない。じゃあ損をしないで買うために、インターネットで、いろんな店を見て回って原価を調べる。でも原価が分っても、人件費、手数料もかかるし、そうなるとモノの値段なんて、あってないようなものである。納得できない、あまりにも高すぎるから買わない、と言っても結局欲しい物が、手に入らないだけである。逆に、値切り倒して買って、「ああ、得したな」と思っても、別の日に買い物したときに、思い切りぼったくられているのかもしれない。

だから物を買う行為というのは、ものすごく大きなリスクを背負うものなんだと太田は思う。新聞や雑誌、インターネットを見ると”絶対に儲かる”みたいなことが、よく書いてあるけど、それはもう詐欺行為か、運がよければ儲かるギャンブルだと見て、間違いないと思う。たまに慈善行為でやっているから、儲けとかは考えていません、とか書いてあるけど、もしそれが本当ならなんかの新興宗教に決まっている。高いお布施を取られるのがオチである。後からニュースで見れば、どう見ても怪しいのに、多くの人が騙されてしまうのは、売る側の作られた公平感に安心しきってしまうからだろう。

結局、モノを買うというのは、損をするつもりで買うしかないということである。買う側は、売る側がどのくらい得をしているのか分らないし、わからないんだから、場合によっては金を騙し取ろうとしているのかもしれない。だから、もし騙されても、「むかつくけど仕方ないか」と思えるような、お金の使い方をしなければならないんだと思う。偉そうなことを言っても、この先太田自身が詐欺に遭う可能性だって充分にあるんだから。「カイジ」を読んでつくづく思うのは結局、自分のリスクは自分でなんとかするしかないということである。


(1/28/2008)
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ひとり陰湿へ